ついにネットの名誉毀損で大量摘発へ

著名人などのブログに悪意の書き込みが集中して閉鎖に追い込まれたりする問題で、警視庁は、男性タレント(37)のブログを攻撃した17~45歳の男女18人について、名誉棄損容疑で刑事責任を追及することを決めた。

これはいうまでもなく、先日ご紹介した『ネットの名誉毀損、無罪が一転、逆転有罪判決』の件と密接にリンクしています。

テストケース、即ち判例を作る為に――、検察は本来なら不起訴処分相当の事案を起訴に持ち込んだのでした。そしてそのことが、この芸能人ブログ事件立件の布石になったといって差し支えないでしょう。

上記の芸能人ブログにあるような悪質な嫌がらせを摘発する為に、名誉毀損の適用を積極的に行ったほうがいいと思いますか?

少なくとも、平和神軍観察会事件に関しては先にご紹介したとおりの状況です。

平和神軍観察会:

私は、全く根拠の無いデマを、調査もせずに書いたのでは決してありません。

それにもかかわらず、「求刑通りの30万円の罰金刑が課せられてしまう」ということは、問題のある企業、団体について取り上げている告発サイト等の管理人についても、刑事罰が課せられてしまうということにつながります。

個別事案としては、刑事有罪というにはあまりに問題があると考えています。こういう事案個別の事情を調整するのも裁判の役割のはずなのですが・・・・。

結果として検察は『芸能人のブログに嫌がらせの書き込みを行っているような小者を摘発する目的で、企業告発サイトなども萎縮させる訴訟を起こしてしまった』ということです。

諸刃の剣、というには社会的バランスが悪いと感じます。

ちなみに、平和神軍観察会事件では、一審無罪になったわけですが、その際に提示された新たな判断基準で『真実性の基準を緩和する』というのは、実は極めて現実的な判断ではあります。名誉毀損が無罪になる為には以下の3つの条件がクリアされる必要がありますが、

  1. 公共性があって
  2. 公益目的であって
  3. 真実の内容である(もしくは真実信じられる相当の理由がある)

例えば「芸能人ブログを集中攻撃」なんて例では、3以前に2あたりが大変怪しいわけです。3については根拠や状況証拠の提示すら困難なのではないでしょうか。

このように意義も目的も異なる事件が、同じ名誉毀損というスキームの中で、かつほぼ同じ量刑で扱われるということ自体が、現行法制度の限界といえると思います。いわば、過失も故意も同様に扱っているという状況と、例えてもいいでしょう。

もっと正しく言えば、表現の自由の問題ですらない事案と、表現の自由に密接に関わる事案を同じスキームで扱わざるを得ず、しかも情状酌量などの観点もない、という状況です。

こうした問題を解決する為には言うまでもなく、旧態依然とした法律を現代に即したものに改正していくのが一番です。それは誰もが分かっていることですが・・・・。現在の経済混乱、政治混乱のなかでは、表現の問題にまでなかなか手が回らないというのが現実のようです。

1件のコメント

  1. 『ネットの名誉毀損、無罪が一転、逆転有罪判決』でのコメントと重複します。

    『芸能人ブログを集中攻撃、「炎上」させる…18人立件へ』これも意味がわかりません。ブログを運営してるなら、1000件の嫌がらせ書き込みがあったとしても、クリック二、三回で一瞬に削除できるはずです。

    仮想現実社会に、現実社会の法を持ち込む司法、検察、大丈夫でしょうか?

    罪が有るとしたら、平然として書き込みをさせていた芸能人です。

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