「ネットの名誉毀損」とひとくくりにするのはもう止めよう

2ちゃんや匿名のブログでは、それに対しては反論する術はありませんが、相手が実名のブログや個人のホームページ(HP)であれば、名誉毀損で訴えることは可能なはずです。

しかし、“ネットの書き込みに対しては、名誉棄損は限定的にしか適用されない”。こんな不条理な判決が1審で示された裁判が、控訴審判決で逆転有罪になりました。読売新聞などによると、その内容は以下のようになります。

問題になったサイトの情報くらいは当たりましょう。信頼性が低いのはあなたの記事の方だ!

と、橋爪さんを応援したい私としてはそういいたくもなります。少なくとも「事実無根のいわれなき誹謗中傷」の例としては不適切であることはコレまでにも何度かお話してきました。そもそも匿名掲示板の書き込みと同列に並べることがおかしいです。

――が、しかし。こと、この件に関しては「問題になったサイトの情報くらいは当たりましょう」というのは大変酷で、そういう誤解が生まれるのも致し方ないことです。マスコミが詳しい報道をしないこともあり、むしろ誤解して当然の上、もうひとつの事情があります。

それはあのGoogle八分です。
ためしに、問題となった告発サイトの正式名称「日本平和神軍観察会」で検索をしてみます

あれ、全くヒットしませんね。そう、問題となったサイトはあのGoogle八分の対象であり、Google八分という言葉が生まれ始めたばかりの頃からの、いわばGoogle八分の老舗なのです。

グーグル村上社長“Google八分”を語る 【IT Pro】

3つめは「個人や法人から『このサイトは自分の権利を侵害している』というクレームがあったサイト」だ。権利侵害とは,著作権侵害や名誉毀損である。「こういったケースは非常に悩ましい」(村上氏)。「そのような場合,グーグルではまず『基本的には我々のあずかり知らぬところであり,コンテンツの持ち主とお話しください』と答える」(同)。しかし当事者同士で解決しないケースが多く「内容証明付で削除要求が送付されることも多い」(同)。

当時の事件に前後して、Google八分の申請方法は広まり、今ではノウハウとして確立してしまっているほどです。

このように日本平和神軍観察会の問題はネット上の表現を考える上で、大変多くのエッセンスが詰まっています。芸能人のブログにストレス解消の書き込みを匿名でやった、とかとは次元の違う話なのです。

確かに、日本平和神軍観察会のサイトの表現には問題があり、その点は裁判でも指摘されていました。裁判でも「ユーザーの目をひきつけるにはある程度仕方がない」という趣旨の判決となってはいますが、正直、決してお上品なサイトであったとは言いがたいでしょう。

しかしそれでも、サイトの目的としては悪質団体に対する非難告発を目的としたものであって、そうしたサイトが、Google八分を受けてサイトが存在しないも同じ扱いを受け、さらには名誉毀損で訴えられたというのが今の現実なのです。

こんな話、他人事だと思いますか?
正直、多くの人にとってはそうだと思います。

しかし例えば、冒頭に紹介した記事では「事実無根のいわれなき誹謗中傷」の例として、先の日本平和神軍事件が上げられています。ちなみに「名誉毀損」=「事実無根のいわれなき誹謗中傷」ではありませんし、裁判では公益目的と公共目的が認められ、事実も多くが認定されています。

従って、冒頭の記事を書いたライターは名誉毀損にあたります。その気になれば容易に訴えることが出来るでしょうね。――でも、もう一度、冒頭のリンク先を読んでみてください。確かに誤解はありますが、書いてあることは至極まっとうなことです。でも、名誉毀損です。裁判で争えば、公共目的と公益目的は認められるでしょうが、真実性は否認されそうです。つまり、橋爪さんが負けたのと全く同じパターンで、ということです。

もう一つ、例を挙げます。悪徳商法業者を実名を挙げて紹介する、悪徳商法?マニアックスでは、管理人が名誉毀損で訴えられました。いわゆる恫喝訴訟です。また、現在もしばしば脅迫文などが送られてきます。最近は、ネット上にはプライバシーを侵害する書き込みを続けられ、こんどは逆に自分がプライバシーの侵害を止めるための訴訟を起こさなくてはならなくなりました

今の法律は、表現の目的の正しさを汲み取ったりはしないのです。

中傷の書き込みをなくすべき、その為には名誉毀損で有罪は当たり前――。そう考えるのは無理もないことかもしれません。しかし現実の名誉毀損という法律は、あまりにいい加減で、弊害の多い諸刃の剣なのです。中傷はなくなるかもしれませんが、我々は一方でその代償を支払うことを余儀なくされるでしょう。

「ネットの名誉毀損」とひとくくりにするのはもう止めよう」への1件のフィードバック

  1. 鈴木正博 のコメント:

    誰でも削除請求が可能な仮想現実社会に、嘘でも、デマでも、書かれて平然としてる方がおかしいのです。削除請求すればすむことです。削除請求できない方が異常なのです。名誉毀損など成立しません。

    名誉毀損訴訟がされて裁判になっていたなど、夢にも思いませんでした、ほんとに、司法、検察で大丈夫なんでしょうか?

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