クライスラー破綻。ファンドが譲歩しなかった理由

〔焦点〕クライスラー破産申請、前途多難なGMの状況を改めて浮き彫りに【ロイター】

GM債に対しクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)で保険をかけている保有者は、GMが打ち出している債務の株式化には応じずにGMが破産処理したほうがリカバリー率がよいとの期待から社債を保有し続ける可能性がある。

要は破綻させたほうが儲かるからです。このスキームはGMもクライスラーも全く同じです。

日本では労組の反抗ばかりが目立っていたGM・クライスラーの交渉ですが、労組は実は8割が再建案を支持。真の敵はハゲタカだったのです。今や米国民からも評判芳しくないヘッジファンドに「お国のために」などという概念がないことはいうまでもありません。

クライスラーの破産について「GMが本命だから脅しのために破産させた」という意見もあります。確かにそういう要素もあろうと思いますが、オバマはGMを破綻させることにためらいは抱いていないでしょう。何故なら民主党の支持母体である労組との争いは既に決着していることに加え、GM再建という観点からもチャプター11を申請したほうがよいのは間違いありません。支持母体への根回しは完了しており、あとはもう金融機関がどういう影響を受けるかだけの問題です。

さらに、オバマはこれまでに戦略的に情報を小出しにしており、既に市場はGMの破産を織り込み済みです。経済指標が米欧総改善しているという追い風もあり(日本を除く)、むしろ「やるなら今」でしょう。

今後の焦点は極めて明快かつ単純です。債権者、即ちファンドが譲歩するかどうか。さらにいうならGMの件でも銀行団は譲歩すると思われ、最終的にはファンドが納得するかどうかが全てです。譲歩すれば良し、譲歩しなければ破産。ルールは極めて単純明快です。

しかし冒頭の記事にあるように、ファンドからみれば破綻させたほうが儲かるという状況ですから、すんなりとは行かないことは目に見えています。

ただ、唯一の解決のシナリオはあります。それは米国民の怒りです。

例えばAIGの巨額報酬問題も結局大半の幹部がボーナスを返上することで決着しました。しかしその背景には、何故か流出したAIG幹部の個人情報、政治家がAIG幹部宅訪問ツアー企画、そして幹部の家族に迫る身の危険、などということがありました。

そして今日、もっとも激しく抵抗していたファンドが、最も早く行動を起こしました。

〔焦点〕米クライスラーの破産法申請、債務削減案に反対した債権者に批判の声【ロイター】

ミシガン州のグランホルム知事は、クライスラーの債務削減案に反対したオッペンハイマー・ファンズ、ペレラ・ワインバーグ・パートナーズ、ステアウェイ・キャピタルの名前を公表した上で、同州とのビジネスには参加させない方針を明らかにした。

自動車関連事業への依存が強い他州でも同様の措置が検討されている。

ペレラ・ワインバーグは30日に態度を変え、「財務省案は、クライスラーの利害関係者すべてと、われわれの投資家・パートナーの利益にかなったもの」との見解を発表。声明で「自身の投資家の利益を守ろうとしたことで批判にさらされている」と訴えた。

その理由が身の危険を感じたからかどうかは定かではありません。
ただ――、変わり身の速さは投機家の重要な資質の一つです。

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